海水魚飼育について現役プロがやさしく解説
金魚やメダカ、グッピーなどの熱帯魚の飼育経験を持つ方は多いですが、海水魚やサンゴを飼育している、または今まで飼育した経験がある方は日本の人口から見ても極めて少ないでしょう。
その理由の1つとして、海水魚は塩を入れて塩分濃度を調整することが必須作業となります。
海水魚飼育やサンゴ飼育にチャレンジしようといざ勉強をしてみるものの、果たして自分ができるのかと不安になり、結局海水魚飼育を諦めてしまう方も多いかとおもいます。
しかし、20年近く熱帯魚水槽や海水魚水槽のレンタル&水槽管理の仕事をしてきて分かったこと。
それは、海水魚は確かにコツは必要ですが、コツさえ掴めば金魚よりも飼育が簡単だなと思うケースもあるということです。
決して大げさでなく、観賞魚の飼育管理において金魚が1番難しいと言えば、べテランアクアリストや水槽管理業者の中には頷く人が沢山いるのも1つの事実です。
つまり、金魚を飼育するスキルがあれば、海水魚を飼育することは夢物語ではなく、誰でも楽しむことができるようになります。
しかし、それは安易にはじめて良いというわけではなく、正しい海水魚飼育の知識を覚えてポイントを掴み実践することが重要です。
ここでは、はじめて海水魚を飼育する方が失敗しない方法をやさしく解説していきます。
マリンアクアリウムシステムの正しい選び方
海水魚を飼育する場合、水槽システムは成功の鍵を握る重要な場所で、何よりも投資の必要がある場所です。
私の経験から、海水魚飼育やサンゴ飼育といったマリンアクアリウムを楽しむなら、水質浄化能力と長期間管理がしやすいオーバーフロー水槽システムを採用することを強くおすすめします。
オーバーフロー水槽システムの最大の特徴は、水槽の水を浄化するためのろ過面積が大きく確保できるところです。
ろ過面積を大きく確保できるということは、ろ過材を多く入れることができる。
つまり、水質浄化の役目を果たすバクテリアの増殖場所が広がりることで、水質悪化を未然に防ぎ多くの海水魚を上手に飼育しやすい環境を作ることができます。
さらに、オーバーフローシステムの場合、外部ろ過システムやその他のろ過システムと比較し、ろ過材を数年洗わなくとも管理することができるのも大きなメリットです。
※私の管理水槽では、ろ過材を洗浄してなくてもウールマットのみの交換で、10年以上維持管理できている海水魚水槽が何本かあります。
ろ過材の洗浄作業を失敗すると逆効果となり、病気が蔓延する可能性が非常に高いものです。
はじめて海水魚を飼育する方にとって、ろ過材を洗わないで良いということはヒューマンエラーを回避する最良の方法なのです。
加えて、オーバーフローシステムなら、プロテインスキマーやヒーターなどの海水魚飼育機材をろ過槽内に収めることができるため、水槽を鑑賞する際に見た目もスッキリして美しい景観を保つことも出来ます。
オーバーフロー水槽システムを購入する費用は、正直安い買い物ではありません。
しかし、水槽設置後に海水魚やサンゴが自分の当初思い描いていた水槽にならない、上手に飼育できず大切な生き物を死なせてしまう精神的疲労や金銭面も踏まえると、水槽のシステムは万全にすべき場所です。
命ある生き物を飼育するためにベストな選択をしてあげることも、飼育者の責任です。
ここでは、以上のことを踏まえて、海水魚飼育やサンゴ飼育に使うべきプロのおすすめマリンアクアリウム用品を解説いたします。
マリンアクアリウムに必須な水槽専用クーラーについて
暑さに弱いサンゴだけなく、海水魚飼育においても水槽用クーラーの導入は必須と言えます。
1年を通して酷暑と呼ばれる夏を乗り切るためには、水槽用クーラーは必要で、もし設置していなければ水温上昇によるトラブルが発生する可能性は極めて高いと断言できます。
水温が30度近くまで上昇すると水槽内の溶存酸素量が低下し、好気性バクテリアが衰弱してしまいます。
バクテリアが衰弱することで、海水魚のフンや餌の残りから発生するアンモニアや亜硝酸といった海水魚にとっての有害物が分解されず蓄積し、水質悪化を引き起こしてしまいます。
水槽用クーラーを導入せずに、部屋のエアコンで水温管理をされる方もいます。
エアコンを使用した空調管理でも上手にできますが、連休で長期旅行に行く場合もエアコンを作動させたまま外出しなければなりませんが、うっかりエアコンを作動させることを忘れてしまうこともありますので注意が必要です。
私なら、複数台水槽管理をするならエアコンを中心に設計しますが、1年を通して23度以下にキープする海水魚を飼育したり、サンゴを飼育するのであれば、室温管理で不安を残すより水槽用クーラーを必ず導入します。
水槽の汚れを濾し取るプロテインスキマーについて
プロテインスキマーは必須ではないですが、導入することをおすすめします。
プロテインスキマーは、アンモニアから亜硝酸にバクテリアが分解する前段階で、強制的に汚れを濾し取り浄化することができると同時に、酸素の供給もすることができます。
プロテインスキマーを使用すると、汚水カップに溜まる汚れが目に見えて分かるため、その効果に驚くものです。
プロテインスキマーには種類が数多くありますが、私のおすすめはH&Sの内部式シリーズです。
汚れもしっかり取れて分解清掃も簡単、定期掃除もしやすく消耗品もたくさんあるため、はじめてプロテインスキマーを使用する方にもおすすめです。
水の透明度も上がり溶存酸素量のキープにも期待できることから、サンゴ飼育だけでなく海水魚飼育にもプロテインスキマーはおすすめです。
予算や設置スペースに余裕がある方は導入を検討しましょう。
また、オーバーフロー水槽ではない場合でも、プロテインスキマーを設置することができます。
外掛け式と呼ばれるプロテインスキマーで、カミハタ社の海道河童や、ゼンスイ社のQQシリーズが有名で能力も高くおすすめです。
病気に弱い海水魚飼育にすすめる殺菌灯について
殺菌灯については、チョウチョウウオ類やヤッコ類などの病気に罹りやすいなど少々気難しい海水魚を飼育する場合は設置を検討しましょう。
ただし経験上、殺菌灯については病気を抑える効果がなかなか分かりにくい商品です。
アオコや、水の黄ばみを抑制する目的なら効果を実感できますが、白点病が発生し病気を打ち消すために設置を検討することはナンセンスですし、そもそも病原菌をすべてシャットアウトできる商品ではありません。
殺菌灯を上手に活用する方法として、現在発生している病気を消すのではなく、予防として設置することをおすすめします。
このことから、海水魚を水槽で泳がす前に殺菌灯を設置して万全な状態を整えてから迎えるようにしましょう。
水槽や水槽機材によって、どの殺菌灯が良いか迷う方もいるかとおもいます。
カミハタ社のターボツイスト、ナプコリミテッドのQLシリーズから東熱殺菌灯まで幅広くありますが、はじめて殺菌灯を使う方で配管接続に自信の自信の無い方は、ターボツイストかゼンスイ社のUVバズーカがおすすめです。
水槽水量に合わせて殺菌灯のサイズを選定したら、殺菌灯へ通水するポンプを決めましょう。
殺菌灯は、使用方法に記載された適正流量を守らなければ正しい効果を発揮することができません。
必ず適正流量も確認するようにしましょう。
マリンアクアリウムにおすすめな照明について
海水魚やサンゴを健康に飼育するためには、マリンアクアリウム専用の水槽照明が必要です。
海水魚の飼育するなら、ゼンスイ社のシャイニングブルーやマルチカラーLEDがあれば問題なく飼育することが可能です。
しかし、サンゴやイソギンチャクなどの無脊椎動物を飼育する場合は、サンゴ育成専用照明の採用をおすすめします。
サンゴは、ソフトコーラルとハードコーラルの2種類に大きく分けることができます。
ソフトコーラルに関しては、ウミキノコや好日性トサカ類、スターポリプやディスクコーラルなどがメジャーですが、このあたりはゼンスイ社のシャイニングブルーでも十分育成させることができます。
ただ、ハードコーラルの一部でより光を必要とするミドリイシやSPSと呼ばれる種類に多くは、システムLEDと呼ばれる高性能な明るく波長などを意識した照明が求められケースが多いものです。
システムLEDでなくても強い光量、サンゴが求める波長など備わっていれば育成させることはできますし、光は最低限に抑えつつ添加剤やサンゴへ給餌をすることで上手に育てるテクニックも注目を集めております。
マリンアクアリウムのライブロックについて
マリンアクアリウムでは、ライブロックと呼ばれるバクテリアが付着した岩を使いレイアウトを組みます。
最近では、ライブロックの流通量が保護条約の観点から落ちていることもあり、擬岩と呼ばれるレプリカの岩を使いレイアウトする方も多く、業界自体もシフトしているように見受けられます。
海水魚やサンゴ水槽のレンタルや販売、設置をしているアクアレンタリウムでも、擬岩を率先して使用しています。
天然のライブロックのメリットとして、良質なライブロックを入手することで、自然界の豊富なバクテリアを水槽に運び入れることができるため、水槽の立ち上がりが早くなる、水槽内の生物相が豊富となりより水槽が安定すると言えるでしょう。
良質なライブロックの特徴として、軽いこと、異臭がしないこと、石灰藻が豊富に付着しているといった特徴があります。
擬岩に関しては、バクテリアなどの生物導入の期待はできませんが、水槽にとって有害な生物やコケ類を持ち込ませないといったメリットがあり、どちらも一長一短といったところです。
好みにもなりますが、良質なライブロックが手に入るなら天然ライブロックを使う、良質なライブロックと巡り会えない、選び方が分からない、予算的に難しい方は擬岩を導入することをおすすめします。
マリンアクアリウムにおすすめな底砂について
マリンアクアリウムの水槽に砂を敷く場合、私のおすすめはカリブシーから出ているアラゴナイトサンドです。
水槽の立ち上がりも早く扱いやすい、粒の大きさもパウダータイプより大きい粒が大きく舞い上がりにくい形状をしていますのでおすすめです。
ただし、チョウチョウウオ主体で飼育するなど、白点病にかかりやすい魚を飼育する場合は注意が必要です。
砂が巻き上がることで、白点病を発症する可能性があるため、粒の大きいサンゴ砂を使用する、または砂を敷かないベアタンクという飼育スタイルで管理することをおすすめします。
ベアタンク管理は水槽の景観は人工的になりますが、管理面と病気の発症を抑制することから非常におすすめなマリンアクアリウムのシステムです。
マリンアクアリウムにおすすめなろ過材について
ろ過材は、棒状のLLサイズのサンゴ砂をおすすめします。
セラミックろ過材なども流行っていますが、個人的には高価なのでサンゴろ過材で十分です。
海水魚飼育においてのサンゴろ過材は、バクテリアの定着だけでなくpH低下を緩和する目的においても非常におすすめです。
ただ、予算が許すならバイコムバフィーは非常に良いろ過材です。
バクテリアの定着力が圧倒的に高く安定しやすくなり、ドライろ過からウェットろ過まで幅広く活用可能です。
pH低下をしてきた場合は、牡蠣殻を使うこともおすすめします。
【プロ推奨】海水魚の正しい選び方
海水魚飼育経験20年の筆者が考える、海水魚飼育が難しいと言われる理由。
それは、多くの海水魚がワイルド個体(天然)ということです。
金魚や熱帯魚の多くは養殖個体ですが、海水魚の多くは天然個体なのです。
以上の事を踏まえて、海水魚飼育にはじめてチャレンジする方でも上手に海水魚を選べるポイントを紹介いたします。
- お店に入荷してから2週間程度経過している個体
- 人工餌を食べている個体
- 購入希望個体だけでなく管理水槽で病気を発症していないこと
この点を注意して購入すれば、最低限のハードルはクリアです。
海水魚を導入する準備が整ったら、3ヵ月程度時間をかけて希望の海水魚を全部入れられるようにスケジュールを組み、1〜2週間に1度のペースで徐々に追加していき完成を目指しましょう。
一気に水槽へ海水魚を多く投入すると、水質を浄化するバクテリアの能力が追いつかず水質悪化を引き起こし衰弱する可能性が高まります。
はじめが大事なので、慌てずにゆっくり、海水魚の調子、水槽の調子を見ながら順次追加をしていきましょう。
マリンアクアリウムの飼育管理方法
海水魚水槽における日々の管理は、コケ取り、水換え、機器洗浄・点検、給餌です。
熱帯魚はもちろん、金魚やメダカと管理する方法に大きな違いはありません。
海水魚飼育で最も他のアクアリウム管理と違うところは、人工海水を使うか使わないかでしょう。
最近では一般家庭の水道から出てくる水に、市販の海水魚飼育専用の人工海水を適量溶かすことで、誰でも簡単に自然の海と同等の塩分濃度で海水を作ることができます。
はじめてマリンアクアリウムにチャレンジする方にとって難しそうと思われるところは、飼育方法がいまいちよく分からないといったところではないでしょうか。
確かに、海水魚の飼育方法については経験が必要です。
ここからは、マリンアクアリウムの水換えポイントなどやさしく解説していきますが、もしどうしてもよくわからないなどご不安な方は、お気軽に海水魚水槽レンタル、メンテナンスのアクアレンタリウムへご相談くださいませ。
1回からの海水魚水槽やサンゴ水槽の出張メンテナンスから、アクアレンタリウムが約20年業界で経験し培ったノウハウが凝縮された、オリジナル海水魚、サンゴ水槽セットの販売、設置そして管理まで、お客様のご要望に合わせて対応いたします。
お見積りは無料で全国対応いたします。
お気軽に、ご相談くださいませ。
マリンアクアリウムの水換えポイント
海水魚の水換えポイントは、1、2週間に1度4分の1程度換水してください。
60センチ水槽で水量60リットル程度の海水魚水槽なら、15リットル程度で十分です。
そして、3カ月~6カ月に1度、水槽の5割程度換水しましょう。
定期的に換水しても、じつは水槽内の環境はどんどん悪化していくので、大幅な換水を不定期でやることも非常に重要なのです。
そうすることで、水槽内がリフレッシュされ水質の経年劣化を防ぐことができます。
海水魚の量が多い、サンゴも飼育している、餌をたくさん与えているといった場合は、pHの低下や硝酸塩が蓄積しているといった、いつの間にか訪れる水質悪化問題へ直面しているケースがあります。
水質を検査し状況が思わしくない場合は、水換え頻度を上げるようにしましょう。
水換えをあまりしたくない、できるだけ手間を減らしたいと考える方は、機材を充実させたりすることで解消できるポイントもありますが、はじめてマリンアクアリウムをやる際は、水換えをすることでどんな変化が生まれるのかを経験として身につけることも重要ではないかと私は考えております。
水換えの時はコケ取りやウールマット交換、プロテインスキマー洗浄なども併せて実施しましょう。
海水魚へ餌を与えるポイント
海水魚の給餌は1日1回または2回与えるようにしましょう。
餌の種類ですが、粗タンパク質が50パーセント以上の餌を与えることをおすすめです。
粗タンパク質が高い餌を中心に複数のメーカーの餌を混ぜて与えることで、海水魚の栄養バランスを確保し健康管理しやすくなります。
餌の種類で言いますと、メガバイトのグリーン・レッドやシュアー、オメガワンなどがおすすめです。
また、ハギ系の魚は非常に痩せやすいため、痩せてきたら給餌量を細かく複数回に分けて与えると良いです。
人工餌なら、キョーリン社の海藻70と呼ばれるおすすめフードもありますので、ハギ系は混ぜて与えることをおすすめします。
【まとめ】はじめて海水魚を飼育するためのポイント
はじめて海水魚を飼育する方に向けて解説させていただきました。
この仕事を始めた時は、周りの上司も含め海水魚飼育の経験が非常に浅く手探りで覚えていきました。
今でこそ、メーカーの尽力もあり海水魚の飼育用品が豊富に取り揃い、簡単に飼育できるようになってきてましたが、それでも管理者の技術力は海水魚需要の高まりにより増してきています。
2021年から急速にアクアレンタリウムでは、マリンアクアリウムの水槽レンタル・メンテナンスサービスだけでなく、海水魚水槽やサンゴ水槽といったマリンアクアリウムの販売から設置、管理に至るまで数多くの法人様、個人様からご注文をいただいております。
また、現在海水魚飼育をしているが、海水魚水槽セット一式をお店で購入したが失敗ばかりしていてどうしたら良いか分からない。
海水魚飼育やサンゴ飼育ができるよう、マリンアクアリウムの水槽管理方法から海水魚飼育機材の見直しをしてほしいというご依頼も多数頂戴し改善作業をするため全国飛び回って対応しております。
数多くの方に、海水魚水槽の魅力、そして熱帯魚水槽の魅力が伝わるよう引き続き努力してまいります。
これから海水魚を飼育する、または今悩んでいる方への参考記事となれば幸いです。
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